
「マシャツーセッチュ」
「マサツ-シェッツ」
「マサチューセッチュ」
「・・・・・。」
なんとなく口ずさんだマサチューセッツが正確に言えないのは、活舌が悪いのではなく寒さのせいだろう。
時折強く吹く風は冷たく、小雪が舞い始めていた。
2021年最後のキャンプ
12月30日。
年末最後のキャンプは友達とのデュオキャンプ。
場所は岩倉ファームパークキャンプ場。
この日が仕事納めとなる友達が来るまでの間、場所取りをして焚き火にあたって待っていた。
年越しキャンプを好む人が増えているなか、恐らく混みあうだろうと思っていたが、この日はまだ大晦日イブということもあって意外とスペースは空いていた。

比較的好きな場所を確保できたので、ソロテントと一時しのぎのタープを設営。
テントは冬キャンプ向けではないため、フライシートは地面まで届かず、ワカメちゃんのパンツ丸出しミニスカートと同じ状態だ。

強めの風が吹く中、むき出しのインナーテントで夜中の寒さを無事しのげるかいささか不安になる。
「マサツ-セッツすう」(マサチューセッツ州)
と48回呟いたところでようやく友達がやって来た。
友達の持ってきたカンタンタープを設置。
屋根しかないタイプなので、別途タープ四枚を側面に張り付けるハリボテの空間だ。

オシャレさは皆無ながらオッサン二人が酒を飲んで話すには十分なスペースがあっという間に完成した。
オジサン二人が語らう雪の夜
チェアに腰を下ろして鍋をつつき始める。
鍋のお供として、おもむろにワインを取り出す。

このクソ寒い中ビールを飲むのは、真夏に熱々おでんを食うくらいナンセンスだ。
こんな事を言うと全日本ビール狂会–年中飲む派の皆様にデコピンを食らいそうだが、ビールは基本的に夏の飲み物だと思っているのでワインをストーブで温めながら過ごす。
ちなみにワインもたいして好きではない。
こんな事を言うと全仏ワイン連盟–ホットワインにシナモン忘れない派にブドウ漬けにされそうだが、そんなに好きではないものは仕方がない。
一人で食べるには多すぎる牡蠣も鍋やフライパンで調理して、すでに年末年始の暴飲暴食は始まっていた。

外を眺めると、吹き込んでくるほど雪が強まり始めワカメちゃんも徐々に雪をかぶりつつある。

一見すると雪中キャンプはいかにも寒そうだが、しっかりと対策をすれば真夏のテントに比べるとよっぽど眠りやすい。

眠る時間にはいい感じに雪がテントの側面に積み上がり、ワカメちゃんスカートからすきま風が入ってくる事はなくなった。
さらに電気毛布を敷いたテント内は、一度潜ると二度と出たくないほどポカポカしていた。

真っ白な世界。だから冬キャンプはやめられない
翌朝。
強めの風が吹く音で目が覚める。
ここ、岩倉ファームパークキャンプ場はお世辞にも景色がいいキャンプ場ではない。が、一晩で降った雪がオッサンでもワクワクするような白い世界に変えていた。


楽しい時間はあっという間だ。
まるで消防団の夜回りの詰所みたいなタープでも十分快適に過ごす事ができた。

が、そろそろ多少オシャレなシェルターへ移行してもいい頃だろう。(年末に起こる物欲)
他のキャンパーさんたちのテントを見ながらキャンプ場内を散歩すると体も温まってきた。

「マサチューセッツ!!」
いつの間にか寒さにも慣れたのか、言い間違えそうな言葉もスラスラと口から出てきた。

きっと一度寒い中でキャンプをすれば、
「タウマタファカタンギハンガコアウアウオタマテアポカイフェヌアキタナタフ」
なんて地名も噛まずに言えるようになる。
冬のキャンプなんてイヤ、というヨメさんにも是非、タウマタファカタンギハンガコアウアウオタマテアポカイフェヌアキタナタフが言える喜びを味わってもらいたいものだ。
マイトシコウレイノトモダチトノキャンプオサメハセッチューキャンプデオモイデブカイモノニナッタ
冬キャンプの醍醐味はやっぱり雪の中のキャンプですね。
おわり。

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