
おそらく靴下を脱ぎっぱなしでコタツの中に放置していたことではないかと思う。
いきなり何のことかって、ヨメの機嫌がすこぶる悪く、翌日に予定していたキャンプを断念せざるを得ない雰囲気になっていた原因のことだ。
その不機嫌はキャンプ予定当日の朝で2日と5時間目に入っており、目下のところ、
「ささいな事で不機嫌最長時間」
のギネス記録を絶賛更新中となっていた。
こうなると当然キャンプをあきらめるほかないのだが、なぜか翌朝には車にキャンプ道具が積み込まれており、そのまま会社へ出勤となった。
すでにキャンプ場の予約はしてあり、行くのか行かないのかの判断は早めにしないとキャンプ場にも迷惑がかかる。
一家の大黒柱として、ヨメがギネス記録挑戦中のところ、のんきにキャンプなど行っている場合ではない。
そう自分に言い聞かせているうちに夕方になり終業の時間となった。
「今日は残業もせず、一目散にヨメのところへ帰ろう」
そう心に決めたのだが、車のハンドルが言うことを聞かない。
右折すべきところを直進し、左折すべきところを右折し、車はあらぬ方向へと進んでいく。
気付けばYoutubeで「松本人志の放送室」のラジオを聞きながら山の中へ車を走らせていた。
おのれの意志とは無関係にワクワクした気分で顔は満面の笑みを浮かべていた。
強風吹き荒れる高原の夜
暗闇の山奥を抜け、らかん高原オートキャンプ場に到着したのは午後7時。
チェックアウト時間を過ぎて受付してもらえ、さらには ”暗いとテントを張るのも大変だろうから” と灯りのある炊事場前の区画を確保してもらえた。

このキャンプ場での焚き火は午後9時まで。
到着してテントを設営していたらほとんど焚き火をする時間もないため、ストーブを持ってきていた。
タープを風よけにしてストーブで温まる予定だったものの、思いのほか風が強くストーブも断念。
これは食事で温まるほかない。
夕食はチャンポンの予定だった。
あらかじめ切ってきた野菜を鍋で炒めて麺をぶち込むだけなのだが、風が強いので料理をするのがいつも通り面倒くさくなってきた。
代わりに麻婆豆腐を作ろうと考え、麻婆豆腐の素を鍋で温めて豆腐をぶち込んですぐに完成したのだが、よくよく考えたら調理の手間はチャンポンと同じではないか。

ああ、やっぱりチャンポンが食いたかったな、と思いつつ、ハフハフと熱い麻婆豆腐を口にしながら、
「う~む、うまい」
とうなった。
風はその後も強くなるばかり。
のんびりと食べている余裕もなくなってきたので、麻婆豆腐だけで夕食を終えた。

タープも風よけとしてまったく役に立たなくなってきたので撤収せざるを得ず。
高原のキャンプということで満点の星を期待したものの、これも風がつよく雲の動きがかなり早いため星が見えてはすぐに隠れる状態で、星空撮影には向かない日となった。
仮に三脚にカメラを載せていても、いつ倒れるか分からないくらいの風が吹いている。
夜9時過ぎ。
キャンプ場に到着してまだ2時間ほどしかたっていないが、焚き火もできず写真も撮れないのに寒風のなか外にいても仕方がないので早々にテントに入ることにした。
テントでスマホをいじろうとするも、我がスマホは最低限の速度しか出ない最安プランなので、こんな山奥ではLINEすらまともに送れないほどネットに繋がらない。
ようやく繋がった瞬間になんとか麻婆豆腐の写真をヨメあてに送信できた。
(なぜ麻婆豆腐の写真を送ろうとしたのかは覚えていない)
それっきり電波状態が✕(バツ)になってしまい、これはいよいよヨメと音信が不通になってしまった。
ギネス記録はどうなっているのかが大いに気になるところだが、通信手段を断たれたいま、それを知るすべはない。
仕方なく寝袋に寝ころんで、Amazonプライムビデオでダウンロードしてきた映画を見ながらオーザックをほおばるという、家では見せてはいけないオヤジの堕落した姿がそこにあった。
ワレ交信ニ成功セリ
強まる風。
バタバタとテントがあおられる音で目が覚める。
夜中の2時だった。

山の中で聞く風の音というのはすごく流れがわかりやすい。
遠くの木が風でザワザワと鳴り、来るぞ来るぞと思っているうちに
その風が近くの木でビューッと音を立てて
そしてテントをバタバタと揺らす。

今までのキャンプで一番強い風のような気がする。
ソロ用のテントはGEERTOPの安いテントだが、一応登山向けっぽいテントなので強風の中でも大丈夫そうだ。

しばらく風の音を聞いていたらすっかり目が覚めてしまい、スマホをいじろうとするもやはり電波が悪い。
ふと、もしかしてここはそれなりに高規格なキャンプ場なのでWifiが飛んでいるのではないかと思いつき、接続できるWifiをスマホで確認すると「rakan-wifi」の文字がある。
あれれ?Wifi 繋がるのか!
ヨメとの交信ができる! (←どんだけ気にしてるんだ)
と興奮したがパスワードがわからない。
なかなか繋がらないスマホでなんとか検索してわかったのは、受付時に渡される利用要綱にパスワードが記載されてあるとのこと。
そういえば遅いチェックインだったためか、利用要綱のようなものは渡されていないぞ。
もしかしたら受付に行けばなにか「フリーWifi」のチラシでも掲げてあるのではないかと考えた。
外は風が強く、温まっている寝袋から出るのは正直シンドイ。
しかし、その後のヨメからの返信があったのかどうかが気になる。(←どんだけ気にしてるんだ)
面倒くさいが意を決して外に出て受付棟へ向かう。
当然誰もおらず真っ暗な受付棟。
真夜中の3時にヘッドライトの灯りを頼りに受付棟の周りをうろつく男。
端から見るといかにも怪しいだろう。
パスワードを探すも、「どこにも書いてないなあ」と諦めかけたその時、レンタル貸出用の受付窓の外にパスワードを発見。

ようやくWifiに接続することができた。
そしてヨメからの返信があるかすぐ確認した。(←どんだけ気にしてるんだ)
そこには一言、
「亭主元気で留守がいい」
不機嫌であれば返信すらないはずだが、この文面を見て、ヨメのギネス挑戦は終わったのだと確信した。
安心してテントに戻り再び寝袋に入ると雨が降り始め、この雨は朝8時ごろまで続いた。
あらためてタープを張るのも面倒くさく、インナーを外したフライシートの中で朝食を食べることにした。

オシャレなキャンプとは程遠いがこれで事足りてるから仕方がない。
ヨメの不機嫌ななか、あえて出かけた今回のキャンプを時系列で書いてみる。
19時 キャンプ場着
20時 夕食
21時 就寝
3時 Wifiをつなぐために徘徊する
8時 起床、朝食
9時 撤収
焚き火もせず麻婆豆腐だけを食べ、たいしてのんびりもできず夜中にWifiをつなぐところがハイライトになるキャンプって何だろう・・・。
おまけ 今回のキャンプ場ちょっとだけ紹介
今回のキャンプ場、らかん高原オートキャンプ場は、山口県岩国市錦町。
広島県との県境にあるキャンプ場で、広島市内からなら岩倉キャンプからもう30分ほど車を走らせれば到着します。
道中は途中やや狭いところもあるものの、比較的道路のコンディションは良好です。
一度は行って見たいキャンプ場だったものの通常サイト4500円(電源サイト5000円)は、普段、2000円~3000円ほどのキャンプ場を利用している我が家には若干後回しになってしまう金額。
今回はシーズンオフ前のワンコインで泊まろうプランで1泊500円で利用できたので、ソロで下見を兼ねてのキャンプとなりました。
結論からすると、設定金額に見合った立派なキャンプ場で、広大な敷地に50区画のキャンプサイトやケビン、自転車広場やレンタサイクル、テニスコートまであり子供連れでも退屈することなく過ごせそうです。


さすがに滞在時間も短く、天気も悪かったためすべてを見て回ることはできませんでしたが、炊事場、トイレなどは☆☆☆☆☆クラスのキレイさ。

炊事場はお湯は出ませんが、洗面所はお湯が出ます。

営業期間は4月から11月なので、今年はオフに入ってしまいましたが、ファミリーで来ても十分に快適に過ごせそうなので、来年機会があればまた来たいキャンプ場だと思いました。
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