
前回、山のてっぺんでテントを張るんだ! と安易に決め込んで登山を開始したものの、ひたすら続く登りに苦しめられ、道中、石地蔵の呪いや大蛇、一つ目の巨人などとの闘いを経て、HPが残り3くらいになったところから話は続く。(※一部事実と異なる表現があります。)
前回記事はコチラ


ぬおおおおおおおおおお!!!!
疲労困憊で生まれたての子鹿と化したおっさんは、最後の力を振り絞り、残る10数段と格闘していた。
トレッキングポールを支えに一歩ずつ進む姿は、まるで戦場の負傷兵・・・。
そして・・・。

なんとか夕暮れには間に合ったようだ。
ザックを下ろしてようやく戦いから解放された。(何の戦い?)
時計を見ると登山口から2時間17分が経過していた。
この山を登る他の登山者の記録をいろいろと見てみると、2時間を超えるのはかなりのゆっくりぺース。
試合には負けたようだが、やりきった充実感に包まれている。(何の試合?)
日頃のウンドーブソクを痛感しながら、2リットル入りのペットボトルの水を引っ張り出してノドを潤した。
ビールの一本でも飲めれば最高だけど、残念ながら重さを考慮して冷蔵庫に置いて来た。
きっと今頃、「亭主元気で留守がいい」とばかりにヨメが飲んでいるんだろうな、と思うと一筋の涙が頬を伝った。
さっそく設営・夕食
間もなく暗くなりそうなので、5分ほどのんびりしたところですぐにテントを設営する。
天気予報の風速は1mほどだったので、風のおだやかなことを期待していたが、むき出しの山頂は風を遮るものもなく、ビュービューと風が吹いている。

設営後、夕食のメインとしてラーメンを食べようと思ったが、あまりに疲れていて腹も減っていない。
結局フリーズドライのビーフシチューだけでなんだか満足してしまった。

普段、腹八分目を守れない生活からすると、登山をすればずいぶんと痩せられそうだ。
さほど広くない山頂をウロウロすると、遠く広島市内の灯りが見える。
そして空は一面雲に覆われていた。


残念ながら、これでは星は見られそうにないな
あらかたカメラで山頂の写真を撮るとそれ以外にやることもなく、体を休めたいので7時過ぎにはテントに横たわることにした。
Amazonプライムビデオでダウンロードしてきた映画を見ながら、普段ならオーザックをほおばるところだが、残念ながらかさばるので持ってきていない。
そして、間もなく寝落ちした。

風がうるさい
午後10時。
風の音で目が覚める。
1畳ほどの広さしかないテントなので、風であおられたフライシートがバタバタと耳元でうるさい。
キャンプ道具の中で何よりも大事な耳栓を今日は持ってきていなかった。
山頂なので他のキャンパーの話し声や音楽などの騒音とも無縁と思っていたのだが、風や雨の音こそが眠りを妨げる最たるものであることを忘れていた。
テントから顔を出して空を見上げると、雲の間にひとつふたつ星が見える。
スマホアプリで天の川の動きを確認すると、2時ごろには南の空に登ってきそうだ。

もしかしたら数時間後には雲が去って星が見えるかも知れない、と期待し一旦寝袋に入る。
だが、風がうるさくてなかなか眠れず、寝たような寝ていないような状態が続き、2時過ぎに目覚ましのアラームが鳴った。
眠い。
眠いのに眠れない。
できればテントの外に出たくない。
3時頃まで寝袋から出られないままだったが、ふと、
なんのために重いザックを背負ってツライ思いまでしてカメラをわざわざ山頂まで運んできたのだ!
と奮起してテントから出た。
雲はほとんどなく星空が広がっている。

風の吹く中で1時間ほどの初グルグル
天の川の方向にはちょうど月があったため撮影をあきらめ、反対側(北側)を向いて星グルグルに初挑戦することにした。
星の軌跡を撮るためにカメラのインターバル撮影をセッティング。
星空をバックにテントも入れて撮影することにした。
一旦撮影を始めるとカメラに映りこむことができないため、終わるまでテントには入れない。
これで1時間ほど風の吹く夜中の山頂でじっとしていなければならなくなった。
待つ間はコーヒーを沸かし、草の上に座って映画の続きをスマホで見ながら過ごす。
風が冷たい。
ときおり風が強まるので、三脚が倒れてしまわないか気になりカメラのそばから離れることができない。
(拝啓 ヨメサン ワタシはもう少ししっかりした三脚が欲しいです)
Amazonプライムビデオのおかげで退屈することなく1時間が過ぎ、カメラが撮影の終了を告げた。
再び朝日が出るまでテントに入って浅い眠りにつく。
星がグルグル。

風が強くてテントが揺れてブレブレだけど、初めてのグルグル撮影でカメラの楽しさをまた一つ覚えた。
清々しい朝。そして下山
朝。 (♪ドラクエ宿屋 ーークリックすると音が鳴るので注意してください)

結局熟睡とはいかなかったものの山頂の朝は清々しい。(HPほぼ回復)
朝食にカニ雑炊を流し込み、朝日を眺める。


足はやや重たいものの、あとは下りるだけなので気分も軽い。
土曜日の朝なのでおそらく登山者が早くから登ってくることを予想し、邪魔にならないよう早めにテントを片付けた。
7時前下山開始。

頂上をあとにしてわずか5分後に、一人目の登山者とすれ違う。
昨日の自分と比べるとずいぶん軽やかに登ってくる。
一歩ずつヒーヒー言いながら登るところを誰にも見られなくてよかった。
もし見られたら恥ずかしかっただろうな・・・。
ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー

どうしましたか?大丈夫ですか?
(なんか生まれたての子鹿みたいだな・・・)

だだだ、だだ、大丈夫です・・・。
(ああ、恥ずかしい・・・)
ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー
下りは当然登りより楽なのだが、そこそこ角度のある下りなので、一歩の振動が大きくしんどい。
HP回復したとはいえ、子鹿がすぐにオヤジ化親鹿になれるわけではない。
登り以上に役に立ったのがトレッキングポールだ。
勢いがついてしまいそうな下りもポールで地面を突きながら降りることで、足への負担が軽減された。
途中、数人の登山者とすれ違う。
下山するまでに20人ほどはすれ違っただろうか。
苦しそうに登っていて、そのうち子鹿化しそうな人は5、6人くらい。
そのほかは普段から登り慣れていそうな人が多かった。
ときおり、よくこんなとこ登ってきたな、と自分自身を褒めながらゆっくりと下山。

すると、つい数十分前にすれ違って登っていったはずの人が、2合目付近の下りで追いついて抜かしていく。
そうかと思うと、また折り返して登ってくるではないか・・・。
思わず

もう一回登るんですか?
と聞くと

あと、2回です
という・・・。
へ?3往復・・・・。
いや、おかしいって。
こっちは登りの片道だけで精一杯だったのだ。
もちろん相手は身軽な恰好をしているので、重いザックを背負っているのと単純に比較はできないのだが、あまり軽々と登られると、なんだかヒーヒー言いながら大冒険したような気分が薄れていくぞ・・・。

あっけにとられながら、1時間15分ほどで下山完了。
下りとはいえ疲労のため少し膝がカクカクしていた。
キャンプを始めて数年。
今回が最も過酷なキャンプ(テント泊)になったが、こんな達成感が得られようとは。
不思議なものであれだけ苦しんだ地獄のような登りだったが、数日たった今、また行きたいなと思うのは喉元過ぎればなんとかってヤツだろうか。
これもまた登山の魅力なのかも知れない。
また普段のヌルめなキャンプを楽しみつつ、我が内に潜むマゾヒズムが目覚め自分を痛めつけたくなったら山へ登ろうと思う。
というわけで、もうちょっと登山向けの靴でもポチるかな♪(新たなブツヨク)
おわり。
今回の登山での使用テントはこちら
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