
10月下旬の平日。
戦士の休息、歯車の一時停止、いや、つまり有給休暇を取りソロキャンプでも行こうかなと思っていたところ、たまたまこちらも馬車馬の乗車拒否、いや、休暇予定だというえびかにさんと予定が合ったので島根県の三瓶山へ向かうことにした。
軽い登山でもしようかなとは思っていたものの、キャンプの前日にえびかにさんが山頂テント泊をしませんかと提案してきた。
以前、重いテントを背負って山頂テント泊のつらい経験をしていたので、ある程度の心構えや準備が必要であることを知っており、突然の提案に一抹の不安を覚えた。

クリームたっぷりのケーキを子供のように皿までペロペロしているのではないか。
人懐っこい大型犬が近寄ってきて飛びつき、よだれたっぷりの大きな舌で顔をペロペロしているのではないか。
つまり、山を舐めているのではないか!!
と思う一方で、
「山頂テント泊、ええな。」
と賛同し当日を迎えることとなった。
テントはどこでも張っていいわけじゃない
気持ちのいい2時間弱のドライブで11時過ぎに三瓶山北の原に到着。
万が一、えびかにさんが山頂テント泊をギブアップした場合に備えて、北の原キャンプ場の受付に行き、もし当日にチェックインしたい時は何時までにする必要があるかを確認した。
すると…。
そもそも山頂ではテントを張れないと言う。
前日にYouTubeで山頂テント泊している人を見たんだけど…、と聞くと、国立公園内の山でテント泊は不可、マナー違反で張っている人はいるらしい。
マナー違反してまで泊まるつもりはないので、重い荷物を背負って登らなくていい事にホッとした。やむ無く断念した。
とりあえず足取り軽く泣く泣くキャンプ場にチェックインし、登山前にテントを設営。
平日だけあって、広々としたキャンプ場の中はほとんど貸し切り状態。

軽めの昼食を済ませて、ザックからテントや寝袋などを抜き取り、ブロガーランク的に下の立場であるワタシが山頂でコーヒーを飲むための水2リットルを運ばされる事になった。(実際はそんなにいらなかった)
それでもずいぶんと軽くなった荷物を背負って登山開始。

山頂にて
オジサン二人は日頃の運動不足から来る体力の衰えを感じ、ベンチを見つけては休みながら、なぜか平均コースタイムよりいくらか早く山頂に到達した。

山頂というのはやはりパワースポット的な何か見えない力が働いているのか、先ほどまで疲労困憊、汗汁筋痛にまみれていたオジサン達のHPをみるみる回復させ、オジサン二人は写真を撮りながら飛び跳ねていた。

そして周囲の景色を撮影していると、

すみません。写真を撮ってもらえますか
と山ガールにスマホを渡された。
「一眼カメラを使っているくらいだから、コイツはちゃんしたポートレートを撮るはずだ。」と思われているかも知れないという、勝手な思い込み(セルフプレッシャー)を感じたワタシ。
1、2枚撮ったところで女性がポーズを決め初めめたので、なぜかワタシのカメラマンスイッチが入り、

あ、いいですね、もっとポーズとっていいですよ。あ、いいですね、いいよ、いいよ。
と二十回くらいシャッターボタンを夢中になって押し続けていたら、

も、もういいです
とモデル(山ガール)に止められて我に返った。
その後、どちらかというと冷たい飲み物が飲みたいというわがままを言い出したえびかにさんだったが、せっかく水を運んできたので湯を沸かし、熱々のコーヒーを飲んで下山した。

王の間での夕食と焚き火
夕方5時前、ギリギリ受付が開いていたので、登山用の食事しか用意してなかったワタシは受付の売店にあったタイカレーの缶詰めとお米を購入。
これまた登山用の固形燃料でカレーを温め、やらなくて済んだ残念ながらかなわなかった山頂キャンプを思いながら食べた。

一方、えびかにさんはタープにインナーをぶら下げるという新しいスタイルに挑戦しており、端から見ると王族の間の雰囲気を漂わせていた。
距離をとって食事をしているワタシに、
「くるしゅうない、近うよれ」
と声をかけて頂いたので、王の間(タープ)に入らせてもらった。
その後は王の一族のお話を拝聴したり、家臣のたわ言などを聞いてもらったりしながらの焚き火を堪能。

登山の疲れもあって消灯の9時過ぎには王が休まれたのを見届けて炊事場へ洗い物をしに行った。
オジサンがオジサンに怒鳴られる
消灯時間が過ぎたのに炊事場の灯りはついており、洗い物をすませたあとスイッチを押して灯りを消すと、突然
「なんで消すんだよ!つけといてくれよ!」
とどこからともなくオジサンに怒鳴られた。
オバサン二人とオジサンの三人組が炊事場から道路を挟んだ位置にテントを張っており、どうやら炊事場の灯りをランタン替わりに談笑していたらしい。

そもそも消灯時間が過ぎているし、まさか炊事場の灯りを使ってキャンプしているとは思いもしなかった。
オジサンに突然怒鳴られたオジサンは、ムカッときたので、
「いやいや、洗い物が終わって電気を消しただけで、その言い方はおかしい」
と言い返すとオジサンはオジサンに向かって
「アー、スミマセン。消さないでください。つけといてください。」
と謝る気ゼロ、セリフ棒読みの逆なでする言い方をしてきた。
オジサンはさらにムカッときたが、奥さんらしきオバサンがしきりに謝ってきたのでオジサンはオジサンが許せなかったがオバサンに免じてオジサンは引き下がった。
オジサンはいつもこういう話し方をするから、オバサンが間に入って謝る役目をしているようで気の毒でもあった。
夜中にふとオジサンが目が覚めて外を眺めると、結局オジサンとオバサンは炊事場の灯りを消すこともなく寝たようだった。
すがすがしい朝

胸クソな出来事があったわりに、登山疲れもあってよく眠れて迎えた朝。
登山用に買っていたフリーズドライの雑炊を流し込み、のんびり朝の焚き火を楽しんだ。

チェックアウトの11時前には王の間も撤収され、楽しかったキャンプも終わりを迎えた。
今回山頂テント泊はできなかったが、登山用の準備をすすめた中で、あらためて山をペロペロしていたオジサン二人には軽い寝袋や装備が必要だと感じ、少なからず予行演習になった。
そんなわけでキャンプをすれば新たな物欲が生まれ、帰宅後ネットで登山用の寝袋を物色する日々が続いている。
おわり。
えびかにさんの王の間についてはコチラ↓↓↓
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